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カモミール

植物のお医者さん


「弱った植物の近くには、カモミールを植えるといい。カモミールがそばにいると、たちどころに元気を取りもどすだろう」

ムーサのインスピレーションをもたらすカモミールの香り

植物のお医者さんという異名をもつカモミールは、ハーブ水を苗木に噴霧すると立枯れ病を防ぎ、堆肥にかけると、分解と活性を早めるとして重宝されてきました。 何世紀ものあいだ主要な薬草として、人にも動物にも献身的に助けになってくれたハーブです。


ハーブティに使われるのは一般的にカモミール・ジャーマンで、リンゴと干し草の甘い香りがします。 胃腸を整えたり、安眠効果が期待できるといわれています。

学名のMatricaria(マトリカリア)はラテン語で子宮=マトリックスのこと。 キク科アレルギーの心配がない限り、小さい子供にも安心して使えることや、月経前の不調を緩和する働きがあることからマザーズ・ハーブとも呼ばれます。 童話「ピーターラビット」でお腹をこわしたウサギのピーターに、お母さんがカモミールティーを飲ませるくだりはあまりに有名です。

精油にはカモミール・ジャーマンとカモミール・ローマンの2種類があります。 乾燥させたハーブを蒸留する過程で、抗炎症作用に優れたカマズレンという特殊な成分が生成され、精油に抽出されると青緑色を呈します。

カモミールという名前はギリシャ語で大地の林檎、カマイ・メロンに由来しています。 日本にはオランダ医学とともに入ってきたので、オランダ語のカミッレから、カミツレ、カミルレと呼ばれてきました。



逆境におけるエネルギー


カモミール・ローマンの学名はAnthemis nobilis(アンテミス ノビリス)、高貴な花という意味を持ちます。


「ノブレス・オブリージュ、今後も救世主足らんことを」

東のエデン(アニメ)に出てくるノブレス携帯、ジョイスの名台詞でも、気品のある高貴なもの、崇高なものには、果たすべき義務があるという意味で使われています。


カモミールが現地球史で果たしてきた貢献度を思うと、ノブレス・オブリージュというインスピレーションを授けたムーサが、カモミールだったのではないかとさえ感じます。


精油を蒸留できるカモミールは、ともに20~50センチほどに生育しますが、草丈約5センチの花をつけない品種もあり、芝生として人気が高いそうです。踏みつけられるほどに広がっていく旺盛な繁殖力から、逆境におけるエネルギーということわざも生まれました。



夏至祭


毎年太陽がいちばん南中高く昇る夏至のころ、ヨーロッパのキリスト教国をはじめ、ロシア、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ブラジルなどで開催される、植物が主役のお祭り。

木々の葉や、花でつくられた飾り物がふんだんに街中を彩り、祝祭前日の夜に摘むハーブは特に薬効が高いと信じられています。 夏至の夜は、神秘的で超自然的なものたちとの結びつきが強まると信じられており、精霊たちに捧げる花冠の花を摘みに行くのも楽しみのひとつだとか。 摘んできた花々を囲んで冠を編み、できあがったものは身に纏い、髪に飾り、大きなオブジェを作って天高く掲げ、精霊たちに捧げます。

花々を囲むだけではなく、水辺で焚火を囲んで瞑想する地域もあります。 どこからともなく人が集まり、しずかに座って炎を見つめ、精霊たちに感謝や喜びを伝えてまた静かに去ってゆく。


各国で微妙に違いはありますが、四つ辻や空き地、湖畔の近くでかがり火をたき、ハーブをくべる祭事もあります。

カモミールは聖ヨハネの日までに花を摘んでおかなければ、魔女ヘカテがお小水をひっかけてまわるという言い伝えがあり、魔女の小水まみれになる前にせっせと摘んで、夏至祭にはカモミールの花も盛大に使われます。 香りのよいハーブがくべられた焚火を7回飛び越えることで、煙の効力が悪霊を追い払うと信じられ、果樹園や家畜小屋にその煙を導き、実りある収穫を願います。


最高位に輝く太陽の光、花々、炎、水辺、四つ辻。 まさに精霊4属性との饗宴にふさわしい演出が盛りだくさんの夏至祭ですが、夏至を過ぎると再び日は短くなり、夜が長くなっていくことから、太陽が一番輝き、植物たちが生気をみなぎらせるその刹那を、精霊たちと人間が一緒になって、存分に楽しむ、とくべつな1日なのだろうと思います。


7つのハーブを枕の下に…

月と太陽庇護のもとにあるハーブ


カモミールは月の庇護、または太陽の庇護を受けたハーブといわれます。

古代エジプト時代、生命の家と呼ばれる神殿で、人々に治療を施していた神官たちはカモミールを聖なる薬草として重んじていました。神や太陽への捧げものでもあったようです。


5000年前のことを想像するには、今様の固定観念がどうしたってじゃまをしますから、神官がどのようにカモミールを崇めていたのかは、正直なところイメージできません。

神々と共存していた古代人が、香気とともに味わう至高体験はいったいどのようなものだったのだろうと想像すると、カモミールの芳香空間に神秘性がいや増します。


夏至や冬至、春分と秋分を、とても重要視していたことは、ピラミッドのふしぎ構造でよくわかりますから、夏至のころ、カモミールが放っていた香気、天の匂いを享受した古代エジプト人の多幸感はいかほどだったのか、好奇心は増すばかりです。



*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。


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