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ヒキオコシ/延命草


良薬口に苦し


ヒキオコシは日本の山野に自生するシソ科の多年生植物です。

ヒキオコシ/延命草

弘法大師(空海)が行脚道中、今にも死にそうに苦しんで、道ばたに倒れている旅人に出会い、近くに生えていたヒキオコシ/延命草を嚙むように伝え、飲ませます。

旅人はたちどころに快癒し、起き上がって元気になり旅を続けたことから、ヒキオコシ(引き起こし)、またの名を延命草と呼ばれるようになりました。

葉はとても苦く、地上部分を乾燥したものは、生薬「エンメイソウ」という名で日本薬局方外生薬規格に収載されています。

40万倍に水で薄めても苦味は残るそうで、民間療法では古くから胃腸の不調に使われてきました。



苦味のある植物といえば春の山菜。

香りよく、独特な苦みとコクがあります。

「春の山そのまんまの香り」ともいえる自然な風味は、冬のあいだに蓄えた植物たちのエリキシル。

過酷な冬季間を生き延びて、芽吹くことができた、いのちの証です。

四苦八苦しながら、苦悩しながら、苦行を重ねて苦い体験を積んで、苦み成分を身の内に蓄えたのだとしたら、それはきっと「毒を以て毒を制す」ような地上サバイブする術を、わたしたちにもたらす食べられる毒・苦汁なのかもしれません。

苦みばしったいい男なんて表現も、厳しい冬を乗りこえたからこそ醸し出されるオーラなんだろうな、と。



苦味は悲しみを和らげる特効薬


朝のルーティンに「コーヒーを淹れて飲む」のは欠かせません。

大きな仕事のあとは、みんなでビールを飲むのも人生の醍醐味。

苦味を味わうと、みぞおちあたりに火が灯り、内側から静かに、けれど確実にからだのエンジンが点火されるような気分になります。


ふきのとう、たらの芽、わらび、こごみ、行者にんにく、あしたば。

その他にも苦味といえば南国野菜のゴーヤ、飲み物では緑茶、ハトムギ茶もほのかな苦みがありますし、ドクダミ、センブリ、タンポポ、ヤロウ(セイヨウノコギリソウ)などの野草茶、もちろんコーヒーやビールも苦み食品です。


陰陽五行説では夏の暑い盛り、心臓を活気づけるために苦みが良いとされていますが、とりすぎると興奮しやすくなるとも。

エンジン着火、活発に始動するにはもってこいの苦みですが、エンジンふかしすぎると公道でやかましく暴走運転する、危ない人になっちゃうよってことでしょうか。


陰陽五行説

からだは冬のあいだ、寒さに耐えられるよう脂肪を逃さないようにします。

雪解けの季節を迎えると、春うららかな陽気に反応して、からだも雪解け・油解け、ため込んだ脂肪を外に吐きだすために、肝臓のはたらきが活発になってゆきます。


肝臓のはたらきを抑制するのは肺臓で、味は辛味、色は白、こころは哀愁・悲しい気持ちに同調します。

苦味をとることは肺臓を制御することにつながり、肝臓が存分に仕事できるよう、サポートするような構図になっています。

苦みのある山菜をはじめとして、旬の野菜やハーブたちは、四季折々にあわせて変動するからだを後方支援する、頼もしいサポーターです。



ストレスフルな日々が続くと、唾のなかに特殊なタンパク質が増えて、苦味を感じる受容体が塞がれ、一時的に苦味を感じにくくなるといわれています。

苦味成分は「肺臓の興奮による悲しみや絶望感を抑制する」という構造を考えると、からだは苦味をたくさん摂り入れることができるよう、工夫してるのかもしれないと思います。


お料理の味付けで、苦味を和らげるには塩が一番てっとり早い調整方法ですが、五行説で見ると、苦味を制御するのはやはり塩味。

TPOにあわせて、興奮しすぎたり暴走してはいけない場所に出向くときは、塩飴などポッケに入れておくのも一考かと思います。



地球社会は複雑系、選別能力も必要だよね


苦いハーブは基本的に捕食されないよう「ぼくを食べてもおいしくないよ」という動物たちへのエクスキューズ。

だから苦味=毒、というのが動物の本能にはそなわっています。

小さな子供は「複雑な苦味」の判別ができないので、ピーマンほどの苦さであっても本能的に毒だ!危険だ!と認識します。


大人になってビールやコーヒー好きになっても、ほかの食べ物の苦味を口にした瞬間、口をへの字に曲げて眉間にしわを寄せるのは、ごくふつうの反応です。

ちなみに酸っぱい味は腐敗のサインとして本能的に敬遠するようセットされています。

苦味も酸味も、たくさんの苦い体験、酸っぱい体験を重ねて、味(人生)の複雑さを知ってゆきます。

腐っているものとそうでないもの、毒の苦さと毒じゃない苦さを、きちんと選別できる舌をもつことは、人生経験をひろげて楽しむ度量を深める、試金石なのかもしれません。




*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。









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