光合成力が強い、さとうきび
植物は太陽の光をうけとり光合成によってデンプンや糖を作り、身の内に貯めています。
植物にとってデンプン・糖はいのちを維持するためのエネルギーです。
さとうきびは、とりこんだ二酸化炭素を濃縮して貯蔵し、効率よく光合成を行うので、一般の植物に比べると糖をたくさん合成することができます。
高温で日差しの強い熱帯・亜熱帯の環境だからこそ、獲得してきた知恵といえるでしょう。
さとうきびからお砂糖が作られ、それは人の脳に欠かせない栄養素になります。
お砂糖は糖質のなかでも即効性があり、お米やパンより吸収が早く、小腸で消化されると数10秒後にはブドウ糖に変身して血中にあらわれるといわれます。
極端な絶食をした場合には脂肪酸からできるケトン体も脳で使われる栄養素になりますが、
それでも3割は脳エネルギー源としてブドウ糖が使われているそうです。
お砂糖の原料、さとうきび
さとうきび(砂糖黍)は、学名:Saccharum officinarum
イネ科サトウキビ属の植物で、お砂糖の原料になります。
学名のSaccharum officinarumは「薬局の砂糖」を意味することばで、カナリア諸島(スペイン領)など、15世紀のヨーロッパで薬局が砂糖を薬として扱っていたことに由来します。
さとうきびの起源を調べると、BC8000年頃に東南アジアに生育していた、またニューギニアやその近くの島々で栽培がはじまったなど諸説あります。
BC400年アレクサンダー大王のインド遠征録には、さとうきびの栽培方法が記されているそうです。
インドから精糖が広がり、現代では世界中の熱帯、亜熱帯地域で広く栽培されています。
さとうきびには茎の内部に糖分を含んだ髄といわれる部分があります。
最近見かけなくなりましたが、20年ほどまえの沖縄では、刈り取った茎をそのまま売っている売店など珍しくありませんでした。
たしか1本50円とか100円くらいで、外側の固い皮をむいて、繊維状の茎をそのまま舐めたり齧ったりしながら商店街をぶらぶら歩くのが楽しみでもありました。
繊維に浸みている甘い汁(砂糖成分のショ糖)を補給するとたちどころに元気になる、頭に栄養がいきわたり、シャキンとする、そんなダイレクトな体験が面白くて、よく買い求めていました。
少し田舎に行くと、さとうきび畑もあちこちでみかけます。
もちろん時期にもよりますが、人の背丈を優に超えているさとうきびの群生は圧巻です。
葉はトウモロコシのような、幅広で美しい稜線を描いており、大きく成長したさとうきび畑のなかを散歩した時には、風にゆれる様を「ざわわ」と表現した人の解像度の高さはすごいなぁ、ほんとに「ざわわ」と聞こえるなぁと、ひとりごちておりました。
秋には茎の先端から穂が出てきて、いかにもイネ科らしくなります。
さとうきび産業
さとうきび1本の重さはおよそ1kg
1本からとれるお砂糖は約120g(標準値)だそうです。
スーパーで売っている1kgのお砂糖は、およそ8本のさとうきびで作られているということですね。
タイやオーストラリア、アメリカ、中国、ブラジル、沖縄・南西諸島など、温暖な気候で栽培が盛んで3メートルを超えて成長します。
砂糖が日本に伝わった記録でいちばん古いものは、8世紀の奈良時代、中国から伝わったといわれています。
当時は大変な貴重品で、ごく一部の上流階級が、食用ではなく薬用で使うシロモノでした。
16世紀には大陸貿易が盛んになり、砂糖の輸入も増加します。
ポルトガル人が種子島に上陸、カステラやコンペイトウなどの南蛮菓子をもたらし、当時の大陸貿易の品目の中では、砂糖は生糸、絹織物、綿織物に次ぐ重要輸入品だったといわれています。
16世紀といえば信長と秀吉、鉄砲とキリスト教、南蛮菓子と茶の湯、といったところでしょうか。茶の湯とともに和菓子が発達したのはいうまでもありません。
江戸時代に入ると幕府は国内産糖を奨励し、少しづつ庶民の口にもお砂糖が入るようになります。
甘くて辛い、江戸前の濃い味が生まれたのも、この時代のお砂糖ブームによるところが大きそうです。
明治時代には近代的製糖技術が入り、ようやく一般家庭にも砂糖が普及するようになりました。
さとうきびは光合成を行う力が強く、効率よく二酸化炭素を吸収します。
石油などの化石燃料に替わるエネルギー原料としても期待が高まっています。 工場を動かすために必要な電力を「バガス」と呼ばれるさとうきびの搾りかすを燃料として発電している製糖工場もあるそうで、バガスは燃料以外にも、家畜の飼料、肥料として使われるそうです。 そしてさとうきびからは、化粧品用・健康食品用の「スクワラン」を生成することができます。
スクワレン・スクワラン
スクワレンは不飽和脂肪酸の一種で、植物オイルの成分とおなじく人のからだに必要な脂肪酸のことです。
体内にある水を還元して水素を取り込み、酸素を発生させる性質があります。
つまりスクワレンは体内の水(H2O)から水素(H2)を取り込み、スクワランへと変化して、そのとき酸素(O)を発生させます。
スクワレンがスクワランへ変化した際に発生した酸素は、血液によってからだ中をめぐり、酸素が不足している細胞に酸素を補給します。酸素を受けとると細胞は元気を取りもどして、新陳代謝も活発になります。
スクワレンが「酸素の運び屋」と呼ばれる所以です。
もともとスクワレンは人の体内で生成される油性物質でもあり、皮膚、リンパ節、骨髄などに多く存在しています。
スクワレンは皮膚細胞への湿潤性・浸透性に優れていることから、外用としてはもちろん、内服することで炎症などを起こしている粘膜にも働きかけるといわれており、昨今では化粧品のみならずサプリメントも多く出回るようになりました。
スクワランは、スクワレンをスキンケア用に安定化させたもので、人の肌表面にある皮脂膜をつくっている成分と似ていることから、保湿成分としても注目を集めています。
シュガースクワラン
サトウキビから発酵して作られるスクワランは、ほかの植物オイルと比べると粘性が低く、さらっとした使い心地です。無色透明で酸化しにくいのも特徴の一つです。
天然由来の保湿剤、エモリエント作用の高い成分として、近年ますます注目度が高まっています。
人間の体内で作られるスクワランと同質で、皮膚への親和性が高く、皮脂膜を作って、空気中の汚れや雑菌、紫外線などから肌を守るShieldのようなはたらきが期待されます。
もちろん皮脂膜と同じで、肌の潤いが逃げないよう保護するはたらきも秀逸といえるでしょう。
*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。
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